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氷高悠「今すぐ辞めたいアルスマギカ」

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  みなさまこんばんは! 今日は某所で行われた合唱祭に参加していた皿洗いです! しかし、朝寝坊はするわ本番で思いっきり音を間違えるわで、なかなかスリリングな一日となりました。すべては寝不足のせいなのです……。

  さて本日は、いきなりファンタジア文庫のお話です!! つまりライトノベルです、ライトノベル!! ラノベ!! うわ、すげぇ、わたしラノベ買うのって深沢美潮さんの「デュアン・サーク」1巻以来ですよ。あれ何年ぐらいですかね。もう15年ぐらい経ちますか?? 今更だけど歳がばれる!!(泣)
  ちなみに「デュアン・サーク」の前は「フォーチュン・クエスト」でした。深沢美潮さん大好きだったんだ!!
  今ちょっと調べてみたら、まだフォーチュン・クエストシリーズって続いてるんですね。息が長いなー!!

  さてさて、今回買ったのは、第26回ファンタジア大賞銀賞受賞作、氷高悠さんの「今すぐ辞めたいアルスマギカ」であります。イラストは菊池政治さん。
  「アルスマギカ」とは魔法連盟の呼称で、「こちら側の世界」での魔法少女を選別する機関の名前なんだそうです。つまり主人公はこの機関によって魔法少女に選ばれ……そして今は、すぐにでも辞めたい心境でいるってことなんですね。何があったんだ(笑)。
  後継者がいないと退職(?)出来ないとか、やたらめったら出てくる敵さんがなんだかみんなしょぼくって倒しても誰からも感謝されないとか、交通費も出ないのに担当エリアが「南関東(東京23区除く)」ととっても広いとか(※ 主人公は千葉在住)、なんかまぁ不満点はいろいろあるようです。どれも不満の規模が小さくて切ないな……。
  本人が我慢すれば上手く回っちゃう、ってところが、より嫌ですね(涙)。
  主人公たちの敵も、別に世界を滅ぼそうとかしてないしなぁ。悪事も規模も小さくて、それこそご近所トラブルのレベル。ただし魔法を使うので、同じ魔法で対抗するしかなく、よって魔法少女の出番となるのですけどね。
  しかも主人公のほのりちゃんは、嫌なことであっても「でもわたしがやらなきゃいけない仕事だし」と、がんばれちゃう真面目な学級委員タイプ。将来、ブラック企業にでもお勤めになったら、鬱病を抱えそうでとても心配になります。力の抜きどころを作るって、大事だと思うんだ!!
  その点、同じ魔法少女の雪姫ちゃんは、アイドル同然の人気を得ているこの魔法少女業が楽しくて仕方ないらしいし、年上の仲間・薙子ちゃんはほのりちゃんに呼び出されても「お前と雪でなんとかなるじゃん」と言って堂々とサボっているし……問題は何も解決していないながら、割と適応していますね。
  でもまぁ、好きな人はとことん好きで熱狂しまくるけど、興味のない人は白い目で見るばかりって点では、魔法少女はちょっとアイドル的な側面もあるのかもしれませんね。
  それにしても、職場(?)に不満がありまくりなのに、仲間の共感がないってのはつらいところですね! これで他の仲間も「ねーっ、そうだよね! もう辞めたいよね!」って同調してくれてたら、ほのりちゃんだってもうちょっと生きやすかったんじゃないかと思うのですよ(笑)。でもそういうの、一切無し!! 両親ですら、魔法少女のほのりちゃんを応援しまくっているのです。嫌だ嫌だと言い続ける娘の声は「もう、照れちゃって!」で黙殺。うわなにこれうざい。
  もう辞める、この戦いを最後にぜったい辞める、今度こそ辞めてやるんだぁぁぁ!! と繰り返しても、雪姫ちゃんや魔法少女のお供の妖精ニョロンには「まーた言ってるよ」「またやめたい病が始まった」と流されるばっかりで。
  ……なにこれつらい(涙)。
  辞める辞める言いながら、いざ敵が現れたらちゃんと変身してちゃんと戦っちゃうほのりちゃんが、読んでいてとっても可哀想でした。魔法少女……なんてブラックなお仕事なんだ……。

  まぁそんな不満渦巻く日常を送りつつ、ようやく現れた次世代の魔法少女の登場に狂喜乱舞したり、その後継者のすさまじい中2病に戦慄したり、優秀な後輩と方針の違いでやや衝突したりと、なんだかんだありながらも「愛と正義とチームワーク」をモットーにして、ほのりちゃんは戦いに励むのであります。
  一見、コメディでしかない魔法少女ものなのですが、思春期の女子が成長していく上で「ものすごくやりたかったもの」が「もうやりたくないもの」に変わってしまう苦悩とか(現実で言うなら習い事や部活でしょうか)、いざ辞めるにしてもやり残しと未練を残したままでは解放されたって報われないことのつらさだとか、そういう、中学や高校時代によく経験する青春の痛み。それがこの作品には、しっかりと描かれているんだと思います。
  あの時はあんなに好きだったのに、どうしてこうなっちゃうんだろう? 何がいけなかったんだろう? どうして、何処で間違えたんだろう? って歯噛みすることも、人によってはあると思います。
  良かれと思って先生や両親がくれる助言も、頭では正論だって分かっていても、どうしても素直に受け取れなかったりね。悩むあまり、そこから脱却するのが目的になってしまって、そもそも何がしたかったんだか分からなくなったり。
  そういう経験って、みなさん、多かれ少なかれあるのではないでしょうか?? その切なさとか、恥ずかしさとか、自分ひとりではどうしようもないもだもだとする気持ち、ジレンマ。
  そういうものを、ちょっと思い出しました。

  でも普段は恥ずかしいから思い出さない!! 絶対にだ!!

  ローティーンからハイティーンの頃って、自分でもありえないぐらいに価値観が変わりますからね~。
  小さい頃に無邪気に信じていた夢物語(※ マイルドな表現)を、大きくなってから「あの頃は中2病って奴だった」「忘れたい過去」「黒歴史」と表現することがありますが、その黒歴史を葬りたくても葬れない、現役続行するしかないほのりちゃんの懊悩やいかばかりか……。
  いやそれよりも、後輩に当たるもゆちゃんの中2病っぷりもすさまじいんですが。これ、彼女の現在のマイブームに則って作られた魔法少女の設定なんだとしたら、数年後……いやさ、来年にはもう恥ずかしさで頭を抱えているかもしれませんね。自分で決めた設定を自分で変更出来ないとか、魔法少女……なんてリスキーなお仕事なんだ……。


  そんな感じで、コメディにまぶされながらも、少女たちの真剣な思いや友情や、憧れなんかの強い気持ち。それらがきちんと描かれている良作だと思います。特に雪姫ちゃんの、ほのりちゃんへの想いが語られるシーンはよかったです。雪姫ちゃんはマジでいい奴! ほのりちゃんはもっと雪姫ちゃんに感謝すべきだと思うんだ。
  ちょっとだけ、友情の域を超えてるかなー? って気もしなくもないんですがね。
  文中にちょいちょい小ネタを挟んでくるあたりも、ああ、こういう小説によくある手法だなぁって思ってニヤッとしたりしました(笑)。
  魔法少女という存在を物笑いの種のように扱いつつも、やはり結論は愛と正義の為に戦う高潔な少女たち、っていう具合になるのですよ。パロディにして笑いに仕立てようとしたのに、やはり王道の魔法少女物語になる。そういうお約束感に、ものすごく安心します。
  いやーでも、とっても面白かったですよ。明るくカラッと笑えて、親しめるお話でした。
  興味が沸きましたらぜひご一読をどうぞ!!


  という訳で久しぶりに小説の話でした!
  ではではー。

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