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「幼女戦記」1~4巻

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  みなさまこんばんは! 今日は初めてキーマカレーを作ってみて、なかなかうまくいったのでご満悦の皿洗いです。材料をみんなみじん切りにするのがポイントですね。トマトは溶けてスープになりました(笑)。

  さて本日は何の脈絡もなく、「幼女戦記」1~4巻の話題であります。以下続刊であります(まだ出てない)。
  知人がアニメを視聴していて、なかなか強固におススメしてくださったのですが、残念ながら見ることはありませんでした。申し訳ない。そもそもタイトルがすごいので(笑)、「それはギャグアニメなんですか?」などと問うてしまったのでした。自分だって過去に、「黒子のバスケ」で同じ思いをしたのになぁ(遠い目)。
  タイトルは大事ですね。本当に。
  そして同時に、タイトルで選り好みをしてはいけないという戒めでもあります。

  という訳で、「幼女戦記」。漫画で読みました。もともとは小説版もあるようであります。原作はカルロ・ゼン氏、漫画は東條チカ先生であります。絵がすごく上手いです。
  おかしなタイトルですがこれはもうそのまんまで、幼女(9歳→のちに11歳)が戦争に参加したその記録の物語なのであります。軍国主義の「帝国」に生まれた、魔導士の資質に十二分に恵まれた孤児、それが主人公のターニャ・デグレチャフです。身寄りがないから軍隊に入らざるを得ず、魔法の才能があったから航空魔導士(技術的に確立された魔術で以て空を飛び、哨戒や敵の観測などをする魔導兵士)になったという必然の流れですね。
  物語冒頭の「ノルデン戦線」において、ターニャは既に“航空魔導少尉”という地位にあり、敵の座標を味方砲兵に知らせる「観測手」として活動していたのでした。
  激化した戦闘の最終盤において敵方からの特攻に遭い、回避もままならず(司令部からの離脱許可が出なかった)、仕方なしに敵を巻き込んだ自爆を敢行。そして、重傷を負いつつも生き残り、この功績で「銀翼突撃章」を受章。
  銀翼突撃章は「生きているうちに授与される者の方が稀とされる」勲章だそうなので、物語開幕早々、ターニャがどれほど無茶をしたのかが分かろうと言うものであります。

  さて、タイトルの「幼女」が何故「幼女」なのかというと、ターニャが才能に恵まれていたので飛び級で士官学校を出てさっさと戦列に加わったから、なのですが、殊更に「幼女」を強調するのはそもそもこれが転生の物語だから、ということもあるようであります。なんと、ターニャはそもそも、日本人のサラリーマン男性だったのです!
  そこそこ優秀な社員だったようですが、冷徹で、人に恨まれるような仕事も淡々とこなしていて。その結果として逆恨みに遭い、電車のホームから突き落とされ、あえなく人生終了……。
  と、ここで「神」に会い、問答の末に神の怒りを買って「非科学的な世界で、女に生まれ、戦争を知り、追い詰められるがよい!!」と突き落とされ……次に目覚めた時はターニャという女児だった、という訳なのでした。
  しかしサラリーマン時代の記憶は残っているので、いろいろと立ち回る際に小賢しい(笑)知恵を働かせるのであります。他人から見た無垢な(少なくともそう思える程度には愛らしい外見)ターニャと、心の中であれこれ考えている中年ぐらいのサラリーマンの狡猾な思考とのギャップが、まずこの物語の見どころですね(笑)。冒頭のノルデン戦線での観測手のお仕事も、楽な仕事の上に戦争なので業績になる、わーい、とか考えているのです。
  まぁ、戦争がそんな楽なものではないってことは、その後すぐ実証されるのですが……。
  っていうかこの「帝国」には、児童愛護の精神はないんですかね。こんな年端もいかない子供を戦場に駆り立てて、非難はされないのでしょうか。ターニャがそこにいるということは、批判があってもさしたる問題ではないのでしょうけど、冷静になってそこに立ち返ってみるとあまり気分のいいものではありませんね。軍服を着た幼女って。
  でもまぁ、その違和感も物語の魅力(?)のひとつでしょうか?
  他のところでも幼女や児童が戦争に参加しているのかもしれませんが、物語には出てこないので分かりませんね。ただ、ターニャを知る他の軍人や軍幹部たちがあまり驚いている様子もないところを見るに、珍しいことではないようだな? と推察することは出来ます。悲しい話ですが。

  という訳で、中身は日本のサラリーマン、外見は幼女の軍人の出来上がり、なのでした。
  ノルデン戦線から「英雄」として凱旋し、戦意掲揚の為に式典にあれこれ参加させられた後は、ターニャが心から望んでいた後方支援のお仕事に就くのですが、これがまぁ、マッドサイエンティストが作った新型の「宝珠」(魔術を起動・実行する為に必要な必須アイテム。見た目、懐中時計に似ている)の起動実験の担当にさせられ、毎回死にそうな思いをする羽目になるのでした。
  宝珠も爆弾と同じで、積み込めば積み込むほど威力は上がるけれども、扱いが難しくてとても兵器としての汎用性は見いだせない、ってなことになる訳です。博士が要求してきた魔導士としての水準がまた高く、それに見合っていて今使える兵士はターニャぐらいだ、ということで、彼女が巻き込まれ……。
  このままじゃいつか実験で死ぬ、と思ったターニャは繰り返し転属願を出し、やがてそれが司令部に届いて「実験の続行は無理だ」と判断され、予算が打ち切られたのですが……ここでまた、「神」が介入!! 実験を神の奇跡で成功させてしまい、その結果、ターニャは(彼女の解釈で言うと)呪われる身となってしまうのでした。
  4巻までを繰り返し読み込んでみると、ここからターニャの「精神汚染」が始まっているので、この新型実験の成功が彼女の大きなターニングポイントだったと思われます。ターニャ本人は自分が「神」に目を付けられているからこうも呪われるのだ、と思っているようですが、「神」にしてみればそこまでの意識はないのか?? ただ信仰心を集めたいという理由で、この困難な実験に介入したようですね。
  なんて奴らだ(笑)。
  これじゃあ、ターニャに「悪魔」と呼ばれるのも納得です。信仰心が欲しいからって人類の歴史にホイホイと奇跡をもたらすとか、なんちゅう客観性・公平性に欠ける行為なのか。やれやれ。

  この新型宝珠を持っていたが為に、ただでさえ過激な言動・居丈高で高圧的な命令を繰り出す少尉だったターニャが、戦線において更なる功績を挙げ、実力も指揮力も申し分がないという評価を与えられていくのでした。
  実験から解放されたターニャが次に配属されたのが、西方、ライン戦線。ノルデンでは北側の通商連合とやらと戦っていましたが、今度は帝国西側の共和国からの国境侵犯があり、これに抗戦する羽目になった帝国。ターニャはこの最前線という激戦区に入れられ、初めて小隊を指揮する身となったのですが、ここで新型宝珠で以て多大な戦果を挙げ、ますます評価が高まり前線へ駆り立てられていく大きな流れが出来てしまうのです。
  物語全体に共通して言えることですが、ターニャの感想や意見と、周囲の考えていることが、ことごとく噛み合いませんね! 4巻の冒頭でそれをしみじみ噛み締めていたターニャですが、もっと早く気付くべきだったと思います(笑)。
  あれこれ腹の中で小賢しく算段し、上官に気に入られ、中央に呼ばれるなりなんなりして優雅に後方支援だ! と思ってはいるのですが、「自分、戦意たっぷりです!」アピールをすればするほど前線にお呼ばれするという悪循環(笑)。これにもっと早く気付いてもよかったのではないかと思います。もしかしてターニャの中の人は、アホなのではあるまいか??
  自分で散々、無能な魔導士なんて前線に必要ない、害悪ですらあるとまで言っているのですから、周囲もそう考えるのだと判断すればよかったのに……。つまり、出来るアピールよりも、出来ないアピール。歓心を買うより無関心を頂けるよう算段すればよかったのに、と。
  まぁ、そうしたところで、天賦の才は裏切れませんから、どのみち「優秀な魔導士」であるターニャはあちこちの戦闘で求められていたでしょうけどね。
  しかし、戦務参謀である准将閣下の前で、この群発的な戦争は世界大戦に発展すると演説ぶち上げちゃったのは、いちばんまずかったなぁ……。

  ターニャは幼女ですが、中身はエリートサラリーマンなので、いろいろ知識があります。特に日本で学んだ世界史をきちんと覚えているようで、その知識に照らし合わせるといろいろと見えてくるものがある様子。兵站の運搬に関する論文をしたためるのも、罵倒の語彙が非常に多岐に渡っているのも、前世の記憶様様でして。
  その彼女(彼?)が見た現在の帝国の状況は、これはもう、周辺諸国がこの機を逃さず同時に攻め入ってくるだろうと容易に予測出来る訳ですよ。ざっと見た感じ、この世界の技術水準はまだまだ19世紀か20世紀初頭ぐらいのものですから、21世紀の日本を生きてきたサラリーマンにはそういう部分でアドバンテージがあるのですね。
  なので戦争の行く末を見事に予言してみせ、それでますます重用される結果になってしまった訳です。
  ま、それはそれとして、ターニャの前世の記憶のせいで、起きている出来事にあれこれ世界史・日本史の事例や現代世界の常識が類例として当てはめられて説明されるのが、ちょっと面白いところであります。ノルデン戦線で自分だけ敵の特攻を受けたことを、関が原における島津の軍に遭ってしまった徳川軍の気分だと例えたり、新型宝珠の安定しなささをを「イタリア製の赤い悪魔」に例えたり。
  漫画的表現でターニャのモノローグにいちいち解説も入るので、分かりやすいです(笑)。世界史のお勉強にもなりますね!(適当)

  というか、この舞台である「帝国」自体、19世紀末ぐらいのドイツを想定していると思われます。実際の世界史とは出来事がそれぞれ異なってきますが、初めに開戦した北方の「通商連合」は北欧とベネルクスあたり、西方の共和国はフランスかな、ということが容易に分かるようになっています。首都名も、実際のものをもじってますしね。
  あとは連合王国ってのも出てきますね。これはイギリスだな。3巻の最後にいきなり大戦から40年後の世界が出てきまして、その舞台がこの連合王国なのですが、どうやらこの王国も大戦に参加したようですね。
  4巻になるとまた戦争当時に時間軸は戻り、いきなり大隊を編成・指揮することになってしまったターニャの苦悩と苦労、そして大隊の訓練の様子などが描かれます。このへんから徐々にターニャの記憶には混乱が生じ、物語の視点も彼女一人のものからかなり引いた、客観視されたものに変化していきますね。新型宝珠の「呪い」で引き起こされた精神汚染だろうと本人は解釈しておりますが、果たしてこれがどう影響するのか……。
  3巻最後でハッキリと、帝国が対戦に敗北したという「歴史」が語られているので、それも相まってターニャの変化が怖くなってきますね。じりじりと悪い方向へ陥っているような予感で。大隊を編成してそれを指揮する、「我が世の春」を迎えている筈なのに、4巻の後半は底知れぬ怖さを感じさせます。新しい戦争も始まるようですし。


  そういう感じで、タイトルを聞いて首を傾げていた頃にはまったく想像していなかった、ガチの戦記物でした!! しかも、どんどん戦争が苛烈になるに従って、ターニャの重用され具合もひどくなっていくというもので。なんせ少尉から始まったのに、4巻ラストでは少佐まで上がってるんですもんね。半端ない。
  周囲の期待とターニャの思惑が外れまくっていて笑っていられたのは、3巻まででしたね。
  重たい物語の中で、ターニャの副官にと付けられたセレブリャコーフ伍長(のちに少尉)だけが癒しだなぁ……。ヴィーシャ(愛称)かわいい。

  文章を読む漫画ではありますが、ちゃんと読んでいけば話は分かりますし、むしろ分かりにくさは少ないぐらいだと思います。こういう重たさを厭わず、ゴリゴリの戦記物が読みたいという方にはお勧めですね!!
  可愛い女の子が軍服で奮闘する物語を期待している方にはあまりお勧めしません!(笑) 中身サラリーマンですし。
  いわゆる転生もので、男性がいきなり幼女にされて戸惑うシーンもあるかと思った、っていうか期待したのですが、そういう苦悩や葛藤はあまりありませんでしたね。幼女だからかな。これから第二次性徴が来れば、また違うんでしょうけど、ターニャは性徴も遅そうだしな!! 貧相だし痩せているし小柄だし!!
  まぁそんなことはどうでもいいのだ!!(笑)

  読むと疲れるかもしれませんが、たいへん面白いです。続きが気になる!! 5巻と6巻も鋭意編集中とのことなので、楽しみに待ちたいと思います!!


  ではではー。

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