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Channel: 生涯一漫画読者
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ビーム4月号、続きです。

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  みなさまこんにちは!! 窓を開けていると寒い、けれども閉めているとなんとなく息詰まるなぁと悩んでいるところの皿洗いでございます。春っていつもこうです。とりあえず今は閉めます。

  さて、コミックビーム4月号の話題、続きです!
  「庭先塩梅」、第35話。
  今回はデイケアの施設の庭先で、もうすっかり現実認識が難しくなっちゃったおばあちゃんとそのお友達のおじいちゃんのやりとりでした。おばあちゃんはお友達の杉原さんがくれた「鍋敷き」をキーアイテムとして、次から次へ思い出を辿っていくのです。少し前まで一緒に暮らしていた旦那さん(死別)との会話や、若かった頃に息子の嫁に料理を教えたこと、ずっと昔、息子がまだ赤ん坊だった頃のことなどなど。
  どんどん若くなっていくおばあちゃんが素敵です(笑)。そして、それに振り回される杉原さんの慌てっぷりがまた……。杉原さん、いい人だ……。
  ここまでいってしまうと、目の前の家族すら誰だか分からなくなって攻撃したり疑心暗鬼になったりするのですが、そういうマイナス面が一切描かれないのはやはり須藤先生の漫画だからかなぁ、と思います。読んでてほんわかしました。身近な人は和んでる場合じゃないんでしょうけどね。

  「春山町サーバンツ」、第24話。今回のつるこちゃんは、とある路地のカーブミラーを一生懸命磨き、綺麗になって大満足! でした。ほんの小さな業務かもしれませんが、小さくても住民の要望に応えることが出来たことで、つるこちゃんはいい顔してます。いいですね! かたや、エッセイすら書けないでいるお父様は、どんどんやつれてひどいことになってますが(笑)、こうして上がったり下がったりするのも、仕事に取り組んでいる証拠……ということで、いいのでしょうか??(笑)

  森泉岳土先生の新作登場! 集中連載「イリーナ」シリーズとして、「祈りと署名」であります。
  大きなお屋敷のお嬢様に拾われた、家出娘のイリーナ。お嬢様のスヴェトラーナ、愛称スヴェータは、「好きなだけいていいのよ」とイリーナに優しくしてくれ、2人は肉体関係を持つのでした。
  しかしお屋敷はなんとなく不穏な空気。「猫がいる」とだけ告げられてはおりますが、上階からは明らかに男の咳が。そこへ食事を運ぶ執事の姿も。旦那様が亡くなってすぐだというのに家出娘なんか拾ってきたスヴェトラーナお嬢様に、使用人もいい顔をしておりません。
  そして、上階に幽閉されていたのは囚われの婿養子だと判明。彼は幽閉されていた部屋から、食事を運んできた執事を殺して脱出したのです。しかし庭で出会ったイリーナが、嫉妬から彼を万年筆で刺殺。そのふたつの死を隠蔽して、2人の女はまだまだ優雅にお屋敷で暮らしていくつもりのようであります……。背徳の香り!!
  こんな事態、すぐに露見しそうなものですが、物語はどうなっていくんでしょうね。それにしても、森泉先生の描く世界の妖しさと美しさに、どんどん引き込まれていく感じがします。

  「赤パン先生!」、第21話。
  夏休みのプール授業でつい張り切りすぎて、足がつり、溺れかけてしまったきらちゃん。心配した庸子お姉さんが、隣の中学校の業務の合間に、車で家まで送っていくことになりました。その時ついに、きらちゃんは、「鮎川先生が好きなの」とお姉さんに告げてしまいました。鮎川先生とお姉さんの関係も知らずに。
  それを聞いて、庸子さんの顔は、一瞬強張った……のでしょうか? 自身の欠けた情緒を自覚しながらも、鮎川さんと愛を育んでいきたいと考えていた庸子さんの心は、これでまたかたくなになってしまうのでしょうか……? 出来たら、そうはならないでほしいのですが、…ううん、どうなるか分かりませんね。ちょっと不安です。
  小学生の妹相手でも、女として扱う面もある庸子さんですからねぇ。ううむ。

  深谷陽先生の短期集中連載「花の色」、第2話。
  今回は、「黄色」のエミコさん。彼女のお仕事はバリのホテルのマネージャーで、対外的な交渉や商談なども担っているようで、なかなか忙しそうであります。
  ある日、レイコさんがまたバリへ来ているから、「鎌倉」で飲もうと誘われたヒロシくん。「3人同時に恋に落ちた」なんて言って笑いを取った(汗)彼ですが、エミコさんからこうして誘われるってことは、嫌われてはいないんでしょうね。でも、だからって恋人にはならないのですよ。妙な距離感。
  しかしその席へやってきたのは、インドネシア人のユタカさん。話も盛り上がり、ユタカさんとエミコさんはなんだかいい感じ……なのですが、それを引き止めるでもなく、邪魔するでもなく、2人で「もう一軒」に行かせちゃったヒロシくん。その物足りない態度に、レイコさんはまたまた彼の恋心を疑ってしまうのでした。
  まぁ、確かに、「片思いでいい」って宣言して告白するなんて、安全圏から眺めているだけの恋ですもんね。レイコさんはキッパリした性格をしてそうですから、そういう煮え切らないヒロシくんがもどかしいんでしょう。それはよく分かります!
  で、結局、エミコさんもホテルの運転手さんにプロポーズされ、相手は子持ちの再婚だったので「子供が出来ない」という彼女のハンデも問題なし、慣習がらみの家事も義理の家族がしてくれるということになって、トントンと話は進んでしまったようであります。まったく考えていなかった方向から攻め落とされましたね(笑)。
  これで残るはレイコさん一人ですが……ここでおもむろにヒロシくんがアプローチしたとしても、レイコさんのことだから、嫌味の一つも言いそうですね(汗)。ヒロシくんはどうするのでしょうか??

  「ウインド・ハートブレイカー」、最終回。
  昨夜の嵐の最中、訪ねてきてくれたオッチャン。けれども朝になって起きたソーちゃんはそのことをほとんど覚えておらず、ただ、「俺のために流れるああいう涙があったんちゃうやろか」「そういうのを考えられへんかったから……」といったオッチャンの台詞だけが頭に残っておりました。
  反抗して気まずかった親にも、ごく普通に接してもらえ、挨拶もなんとか返すことが出来ました。
  そしてようやく、ラブレターの犯人が発覚。なんと、サッちゃんでした。ソーちゃんがふられると分かっていて書いたとのこと。……っていうか、ふられてほしかったんでしょうね。自分に気付いてほしくて。そのラブレターの文面を読み、図書室でいつもサッちゃんが自分と同じ本を借りていたことを知ったソーちゃんは、ようやくサッちゃんの思いに気付き、やっとサッちゃんと向かい合うことが出来ました。
  彼女が、自分のために泣いてくれる人であったから、というのも大きな要因でしょう。オッチャンの言葉が頭に残っていたからこそ、涙を見て思うところがあったソーちゃん。視点が変わって、視界が拡がって、……また次のお話が始まるのであります。
  恋の行方はどうなるかは分かりませんが……とりあえず、よかったねサッちゃん!
  でも人の名前を騙ってラブレターをだすのはいけないと思います。はい。

  ハーマン・メルヴィル原作「バートルビー」、後編。
  バートルビーは完全に精神を病んだようで、どんな仕事を言い付けても「そうしない方がいいのです」とだけ言い、なにもかも拒否するようになりました。あまりにも何もしないで、けれども相変わらず事務所で寝起きしているものですから、彼の雇い主は不気味がってバートルビーを解雇しますが、解雇されてもまだまだ事務所に居座り続けるバートルビー。ずっと机に座って、壁のほうを向いて……。
  その、物言わぬ存在に追い詰められた法律家は、いっそ事務所ごと変えてしまおうと、余所で新しい貸事務所を借りて契約して、引っ越してしまいました。
  しかし空き部屋になったその事務所でも、まだバートルビーは壁のほうを向いて座っているのでした。果ては管理人に部屋を追い出されても、ビルの入り口の階段で座り込み、警察に通報されて拘置所に入れられてもまだまだ……。法律家は、彼に出来ることは色々と手を尽くしたのですが、バートルビーの態度は最後まで変わらず、やがて彼は食事を取らなくなって拘置所の中で淋しく死んでいったのでした。
  都市に抱かれ、仕事に忙殺され、人間らしい心を失っていく人間の不気味さを描いた中篇だと思います。これが1853年に書かれたという事実は、まさに衝撃ですね!! それからきっちり160年経った今でも、人の心の問題はいつもお仕事の隣にあるのですから。メルヴィルの眼力と表現力に畏怖する思いであります。
  可哀想なバートルビーは、現代人の姿なのかもしれない。そう考えさせてくれる寓話でした。法律家が最後に呟く「…人間」という台詞が、グッと重くのしかかってきます。


  ビーム4月号の話題でした! さて、5月号を買ってこようかと思います(汗)。ではではー。

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